大腿骨頭壊死症
【大腿骨頭壊死症について】
「歩くたびに股関節が痛い」「原因不明の足の付け根の痛みが続く」— もしあなたがこのような症状に悩まされているなら、「大腿骨頭壊死症(だいたいこっとうえししょう)」の可能性があります。
大腿骨頭壊死症は、国の指定難病にも定められている、股関節の機能に重大な影響を及ぼす疾患です。特に、大量の飲酒習慣やステロイド剤の長期使用経験がある方は注意が必要です。
本記事では、大腿骨頭壊死症のメカニズム、なぜ発生するのかという原因、進行度の見分け方、そして痛みを和らげ日常生活を取り戻すための最新の治療法について、整形外科専門医が詳しく解説します。
【大腿骨頭壊死症とは? – 骨頭が「虚血」で壊れていく病態】
大腿骨頭壊死症は、股関節を構成する大腿骨の先端部分(骨頭)への血流が途絶えることによって、骨組織が死んでしまう(壊死する)疾患です。
血液が届かなくなるメカニズム
大腿骨頭は、細い血管から血液の供給を受けていますが、何らかの原因でこの血流が妨げられると、骨細胞に必要な酸素や栄養が届かなくなり、骨が壊死してしまいます(虚血性壊死)。
壊死した骨はもろくなり、特に体重がかかることで陥没(へこみ)が生じます。この陥没によって、股関節の関節面が変形し、最終的に股関節全体の機能が破壊されてしまうのです。
発生しやすい年代と男女差
この病気は30代〜50代の比較的若い世代に発症することが多く、働き盛りの生活に影響を及ぼしやすいのが特徴です。男女比は男性にやや多い傾向がありますが、性別にかかわらず注意が必要です。
【要注意!大腿骨頭壊死症の主な原因とリスク因子】
大腿骨頭壊死症は、大きく分けて「原因が特定できるもの」と「原因不明のもの」に分類されます。
1.ステロイド剤の使用
腎臓病、膠原病(リウマチなど)、アレルギー疾患など、様々な病気の治療でステロイド剤(副腎皮質ホルモン)を大量・長期にわたって服用している方は、血流障害が起こりやすくなるため、リスクが非常に高まります。
2.アルコールの過剰摂取
アルコールを常時、大量に摂取する習慣(多量飲酒)がある方も、血液中の脂肪が増えたり、血管が詰まりやすくなったりすることで、大腿骨頭壊死症の発症リスクが高まるとされています。
3.外傷やその他の病気
- 大腿骨頸部骨折
- 潜水病(減圧症)
- 原因不明(特発性)
股関節の骨折により、骨頭へ血液を送る血管が損傷し、壊死を引き起こすことがあります。
頻度は低いですが、特定の職業や活動が原因となることもあります。
上記のような明らかな原因がなく発症するケースも存在します。これは、指定難病の対象となっています。
【進行度に応じた症状の変化と診断】
大腿骨頭壊死症の症状は、病気の進行度によって変化していきます。
段階的な症状の現れ方
- 1.初期段階(無症状〜軽度)
- 2.進行期(陥没・変形)
・骨頭の内部が壊死しているだけで、まだ陥没や変形が生じていない段階です。
・この時期は、ほとんど症状がないか、時々歩行時や運動時に軽度の違和感を覚える程度で、見過ごされやすいことがあります。
・壊死した骨頭に体重がかかり、陥没が起こり始めると、股関節の痛みが現れます。
・歩行時や階段の上り下りで痛みを感じることが多くなり、安静時にも痛みが持続するようになります。
・痛みをかばうことで、周囲の筋肉が萎縮(やせ細る)し、股関節の動きが悪くなる(可動域制限)ため、正常な歩行ができなくなってしまいます。
診断方法
診断には、問診(特にステロイド使用歴や飲酒歴)と画像検査が用いられます。
- レントゲン検査
- MRI検査
- CT検査
初期段階では変化が見えにくいことがありますが、進行すると骨頭の陥没や変形が確認できます。
初期段階での診断に最も有用です。骨が壊死している領域(血流が途絶えた領域)を早期に確認することができます。
骨の緻密な構造や変形の程度を立体的に評価するために用いられます。
※当院ではMRIやCTが必要と判断した場合適切な連携医療機関にご紹介いたします。
【大腿骨頭壊死症の治療戦略 – 保存療法から人工関節まで】
治療法は、壊死の範囲、骨頭の陥没の有無、患者様の年齢や活動性によって総合的に判断されます。
1.保存療法(非手術的治療)
壊死の範囲が小さく、体重のかかる場所に壊死がない場合や、初期段階の場合は、手術をせずに経過観察する保存療法が選択されます。
- 免荷(めんか)と装具療法
- 薬物療法
- 理学療法(リハビリテーション)
- 生活指導
松葉杖や杖を使用して、壊死部に体重がかかるのを制限します。
痛みや炎症を抑えるために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などが用いられます。
股関節周囲の筋力を維持・強化し、関節の柔軟性を保つための運動指導を行います。
長距離歩行、階段の上り下り、重量物の運搬など、股関節に大きな負担をかける活動を制限します。
2.外科的療法(手術)
保存療法で痛みが改善しない場合や、骨頭の陥没・変形が進行している場合は、機能回復を目指す外科的療法(手術)が検討されます。
- 1.骨切り術(こつきりじゅつ)
- 2.人工股関節置換術(じんこうこかんせつちかんじゅつ)
・比較的若年者で、壊死部がまだ小さく、関節面が保たれている場合に行われます。
・骨頭の向きを変えることで、体重がかかる場所を壊死していない健全な部分に移し、骨頭の陥没・変形を防ぎます。
・比較的若年者で、壊死部がまだ小さく、関節面が保たれている場合に行われます。
・骨頭の向きを変えることで、体重がかかる場所を壊死していない健全な部分に移し、骨頭の陥没・変形を防ぎます。
【まとめ:早期発見と生活習慣の見直しが鍵】
大腿骨頭壊死症は、進行すると日常生活に大きな制限をもたらす疾患ですが、初期段階で発見し、適切な治療と生活習慣の改善を行うことで、進行を遅らせたり、手術を回避できる可能性があります。
- 股関節の痛みが続く方
- ステロイド剤の服用歴や大量飲酒の習慣がある方
は、症状が軽度であっても放置せず、一度整形外科専門医にご相談ください。当院では、正確な診断と、患者様のライフスタイルに合わせた最適な治療方針をご提案いたします。

