交通事故の治療に健康保険を使うときのデメリットとは?知っておきたいリスクと注意点
交通事故に遭い、治療を受ける際に「健康保険を使うべきか、使わないべきか」と悩む方は少なくありません。一般的に、交通事故の治療費は加害者の自賠責保険や任意保険でまかなわれることが多いですが、状況によっては健康保険を使う選択肢もあります。
しかし、安易に健康保険を使うことで、思わぬデメリットやトラブルに発展するケースも存在します。この記事では、交通事故の治療に健康保険を使うことの主なデメリットと、その際の注意点について詳しく解説します。
交通事故で健康保険が使えるケースとは?
まず、交通事故の治療に健康保険が使えるのはどのような場合でしょうか。
原則として、交通事故は「第三者行為による傷病届」を提出することで、健康保険を利用して治療を受けることが可能です。これは、加害者がいる事故で、その加害者が治療費を支払う義務がある場合に、一時的に健康保険で立て替え、後で加害者の保険会社に健康保険組合が費用を請求する形になります。
- 加害者が不明の場合(ひき逃げなど)
- 加害者側が過失を認めない場合
- 加害者が無保険の場合
- 被害者側にも過失がある場合(過失割合に応じて自己負担が生じる可能性も)
- 自賠責保険の支払限度額を超過する場合
これらのケースでは、一時的に健康保険を利用することで、ご自身の金銭的負担を軽減できるというメリットがあります。
交通事故の治療に健康保険を使うデメリット
では、ここからが本題です。交通事故の治療に健康保険を使うことには、いくつかのデメリットが存在します。
1.治療費の全額が補償されない可能性がある
健康保険を利用する場合、保険診療の範囲内での治療しか認められません。これは、健康保険が「必要最低限の医療」を保障する制度であるためです。
- 自由診療との差額が発生
- 慰謝料の減額リスク
交通事故治療では、自賠責保険や任意保険(加害者の保険)を利用した「自由診療」が一般的です。自由診療の場合、医師の判断に基づき、より高度な治療や、早期回復を目指すための特別なリハビリテーションなどが受けられることがあります。しかし、健康保険を使うと、これらの自由診療で受けられる治療が制限され、結果として自己負担が発生する可能性や、十分な治療が受けられない可能性があります。
交通事故の慰謝料は、治療期間や治療内容によって算出されます。健康保険を使った場合、保険診療の範囲内での治療となるため、自由診療に比べて通院頻度が少なくなる、あるいは治療期間が短くなる傾向がある可能性があり、その結果として慰謝料の算定対象となる通院期間や通院日数が減少し、受け取れる慰謝料が減額される可能性があります。」
2.保険会社との手続きが複雑になる可能性がある
健康保険を利用する場合、「第三者行為による傷病届」など、ご自身で健康保険組合への書類提出が必要になります。この手続きは煩雑であり、慣れない方にとっては大きな負担となることがあります。
また、加害者の保険会社との連携も必要となり、治療内容や費用の内訳について保険会社からの確認が入ることもあります。
3.治療の選択肢が制限される可能性がある
前述の通り、健康保険診療は国が定めた診療報酬点数に基づいて行われます。そのため、最新の治療法や、健康保険適用外の薬剤、より手厚いリハビリテーションなど、治療の選択肢が制限されることがあります。
特にむち打ちなど、明確な損傷が見えにくい症状の場合、健康保険適用範囲内での治療だけでは、十分に症状が改善しない可能性も否定できません。
4.過失割合によっては自己負担が生じる
被害者側にも過失がある場合(例:信号無視の車同士の衝突など)、その過失割合に応じて、健康保険を使ったとしても自己負担が生じる可能性があります。これは、健康保険組合が加害者側に請求できる金額が、過失割合によって減額されるためです。
自賠責保険や任意保険を利用した自由診療の場合、被害者の過失割合が低い限りは、基本的に自己負担なく治療を受けられることが一般的です。
5.損害賠償請求に影響が出る可能性
健康保険を使った治療は、加害者側の保険会社が「治療費を抑える目的」と捉える場合があります。これにより、示談交渉において治療の必要性や期間、慰謝料の金額を巡って争いになる可能性もゼロではありません。
また、健康保険で賄えない部分の治療費(例:差額ベッド代、診断書作成費用など)は別途請求が必要となり、これらも交渉の対象となることがあります。
健康保険を使うべきか迷ったら整形外科に相談を
交通事故の治療に健康保険を使うかどうかは、個々の事故状況や症状、そしてご自身の経済状況によって判断が異なります。
安易な自己判断は、後のトラブルにつながる可能性があります。まずは整形外科を受診し、医師や専門スタッフに現在の状況を詳しく伝え、最適な治療方針とともに、保険に関するアドバイスを受けることを強くお勧めします。
まとめ:メリット・デメリットを理解して賢い選択を
交通事故の治療に健康保険を利用することは、一時的な金銭的負担を軽減できるというメリットがある一方で、治療内容の制限、手続きの煩雑さ、慰謝料への影響など、複数のデメリットが存在します。
ご自身の症状をしっかりと改善させ、将来的なリスクを回避するためにも、交通事故に遭われた際には、まずは早期に整形外科を受診し、医師と相談の上、治療方針と保険の利用について慎重に検討することをお勧めします。
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