石灰沈着性腱板炎
【石灰沈着性腱板炎とは】
石灰沈着性腱板炎は、肩関節の腱板内にリン酸カルシウムの結晶が沈着し、炎症を引き起こす疾患です。40~50歳代の女性に多くみられ、加齢やホルモンバランスの変化、カルシウム不足などが原因として考えられています。腱板とは、肩関節を動かす4つの筋肉(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)であり、骨と筋肉をつなぐ組織です。この腱板に石灰が沈着することで、肩の痛みや運動制限が生じます。石灰沈着のメカニズムはまだ解明されていませんが、自然に消失することもあります。
【原因】
原因ははっきり分かっていませんが、40~50歳代の女性に多く見られることから、加齢やホルモンバランスの変化が関与していると考えられています。また、腱板の血流不足や、腱板への負荷も影響している可能性があります。
【症状】
主な症状は、肩の激しい痛みと運動制限です。痛みは安静時や夜間に強くなることが多く、日常生活に支障をきたすほど激しい痛みが生じることもあります。石灰沈着性腱板炎の初期は非常に強い痛みが出ますが、そのような激しい痛みがずっと続くことはほとんどありません。しかし、激しい痛みが治まっても、中程度の鈍い痛みが続いてしまう人もいます。また、石灰が腱板内で徐々に大きくなると、痛みや炎症が悪化する可能性があります。石灰沈着性腱板炎は、一般的な内服や注射で9割の人が改善しますが、一部の人では痛みが長引いてしまうことが知られています。
【検査・診断】
石灰沈着性腱板炎の診断には、レントゲン検査が有用です。レントゲン検査では、腱板内に石灰の影が確認できます。石灰沈着性腱板炎に特徴的な所見として、石灰の大きさや性状、腱板との位置関係などが挙げられます。また、問診や触診も診断の重要な手がかりとなります。問診では、痛みの部位や程度、発症時期などを詳しくお伺いします。触診では、肩関節の可動域や圧痛の有無などを確認します。必要に応じて、超音波検査を行うこともあります。超音波検査では、石灰の大きさや性状、腱板の状態などを詳しく観察することができます。
【治療】
石灰沈着性腱板炎の治療は、保存療法が基本となります。保存療法では、薬物療法、リハビリテーション、注射療法などを行います。
- 薬物療法:痛み止めや消炎鎮痛剤などを用いて、痛みを和らげます。
- リハビリテーション:肩関節の可動域を改善し、筋肉を強化します。
- 注射療法:炎症を抑えるために、ステロイド注射を行うことがあります。
- 体外衝撃波:石灰を破壊し、吸収を促進する治療法です。
- 手術療法:保存療法で改善が見られない場合、手術で石灰を摘出することがあります。
【予防】
石灰沈着性腱板炎の予防には、以下の点に注意することが大切です。
- 適切な運動:肩関節に負担のかからない運動を心がけましょう。
- バランスの取れた食事:カルシウムやビタミンDを積極的に摂取しましょう。
- 冷え対策:肩を冷やさないように、保温に気を配りましょう。
- ストレス解消:ストレスを溜め込まず、リラックスできる時間を取りましょう。
- 姿勢改善:正しい姿勢を保つように心がけましょう。
【当院での治療】
当院では、石灰沈着性腱板炎の治療として、薬物療法、リハビリテーション、注射療法などを行っています。理学療法士によるリハビリテーションでは、肩関節の可動域改善や筋力強化訓練など、患者さんの状態に合わせた適切なメニューを作成いたします。
【よくある質問】
Q:石灰沈着性腱板炎は自然に治りますか?
A:はい、自然に消失することもあります。しかし、痛みが続く場合は、適切な治療が必要です。
Q:石灰沈着性腱板炎は再発しますか?
A:再発する可能性もあります。予防策を心がけ、定期的な検診を受けましょう。
Q:どのような運動が石灰沈着性腱板炎に良いですか?
A:肩に負担のかからない運動、例えば、ラジオ体操やストレッチなどが良いでしょう。

